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ボストンの科学館(ボストン市,マサチューセッツ州,アメリカ合衆国)Museum of Science


今回は大規模科学館の一例としてボストンの科学館を紹介します.

この科学館(以後,ボストン科学館と呼びます)は理系のあらゆる分野
を網羅した展示物とシアター設備を備えた大型の私立科学館です.年間
来場者数はおよそ160万人.ボストン市の人口(60万人)と比べる
とその人気が窺えます.ボストン科学館はボストンの市街地に隣接して
おり,専用の地下鉄駅もあるためボストンの観光スポットとしても有名
です.1830年設立の歴史ある科学館で,毎年,科学啓蒙活動に貢献
した人々(例えばカール・セーガン博士など)へ賞を授与するような自
他共に認める科学館の本家と言えます.当初は自然史博物館として開設
され,第二次世界大戦後にボストン科学館に改組され,後にボストンと
いう名前が外れて”科学館”という名前になりました.大胆ですね.そ
う言えば有名なボストン美術館も正式に和訳すると「美術館,ボスト
ン」なんですよ.
ボストン科学館がある米国マサチューセッツ州ボストン市は学都として
大変有名な街です.世界的に知られているハーバード大学やマサチュー
セッツ工科大学,ノーベル賞を受賞された下村さんが名誉教授を務めて
おられるボストン大学など50校以上の大学がしのぎを削る学術都市で
す.この科学館を語る上でボストン市の学術都市として顔は極めて重要
な要素だと思います.なぜなら,ボストン科学館のスタッフや設置され
ている機器の多くは近郊の大学と深い関係にあるからです.この点は後
に記します.
次にボストン市の立地について記します.ボストン市はアメリカ北東部
(ニューイングランド地方)最大の都市で,人口は60万人ほどです.
市街地のすぐそばにある国際空港はヨーロッパへのハブ空港として機能
しており,アメリカ国内外からのアクセスは大変便利です.また,
ニューヨークへは特急電車やバスを使って乗り換え無しで往来できま
す.市街地から空港までも地下鉄やバスで簡単に行けます.
先ほどボストン市の学術都市としての側面を簡単に記しましたが,もう
少し付け加えると,ノーベル賞を受賞された下村さんが以前在籍されて
いたウッズホール海洋生物研究所もボストン市から車で1時間半ほどの
近さにあります.ウッズホール海洋生物研究所は過去に津田梅子や野口
英世も在籍していたことがあり,そして単一の研究所としては最多の
ノーベル賞受賞者(55名)を輩出している世界的な研究機関です.


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ボストン科学館はボストン中心街と大学街を区切るチャールズ川に架か
る橋の途中にあります.中心街からは1kmほど,マサチューセッツ工
科大学までも1kmほど,ハーバード大学まで3kmほどの場所です.
学生にも観光客にも利用しやすい立地です.また,ボストンでかなり人
気のある観光ツアー(ダックツアー:水陸両用車による市街観光)の乗
り場もあります.ボストン科学館から眺めるチャールズ川やボストン市
街の景色は大変綺麗ですし,近くにちょっとした広場もありますので散
歩のついでに立ち寄る人も少なくないと思います.


車で来ても大丈夫です.5階建てくらいの立体駐車場が設置されており
850台駐車可能とのことです.この写真は駐車場からボストン科学館
(レンガの建物)を撮影したものです.


さて,ボストン科学館の内部に入っていきましょう.ボストン科学館の
展示は通常展示とシアターに大別できます.通常展示は700種以上の
展示物で構成されていますが,ボストン科学館が主張する”体験型”展
示物はそれほど多くありません.シアターは2つあり,1つはプラネタ
リウム,もう一つは大画面スクリーンと凄まじい音響設備が自慢の傾斜
半球型シアターです.おそらくボストン科学館で最も人気のある設備は
この大画面シアターではないでしょうか.
ボストン科学館の開館時間は9時から19時(冬季は9時から17時)
金曜は一年を通して21時までとなっています.料金は複雑で,通常展
示のみの入館料は大人19ドル,子供16ドルですが,シアター鑑賞は
別料金になっているので組み合わせると大人で40ドル以上になる場合
もあります.シアターでは2009年5月時点で毎日14の
ショーが行われています.ショーの上映時間はプログラムにより違いま
すが50分間程度のものが多いので一日で全部見るのは不可能だと思い
ます.しかもプログラムは頻繁に変更されるので,真面目に全部の
ショーを鑑賞するにはかなりの頻度で来館する必要があります.シア
ター鑑賞が別料金制になっているのはおそらくこのショーだけを見に来
る人が多いからでしょうね.

それでは展示物を紹介したいと思います.最初に断っておきますが,こ
こで紹介するのは展示物のほんの一部です.訪れた日は午前中から入館
したのですが,それでも時間がなくて全部は見られていません.もっと
見たい方はボストン科学館のホームページをチェックして下さい.
http://www.mos.org/



ボストン科学館の内部です.展示スペースは3階建てになっています.
この写真は2・3階を撮影したものです.



2階から1階を見下ろしたらこんな感じです.



とにかく展示物が多いです.



展示物は体験型ということですがケースに入っているものが多いです.
ケースの中のものを外から動かすというものを体験型と主張しているのでしょうか.



とにかく説明が盛りだくさん.真面目に読み始めるとかなり時間が掛か
りました(言語の問題も大きいですが).



展示物は綺麗に作られています.



フランスにあるゴシック建築の教会をプラスチックで作ったもの.偏光
で見ると建築物のどの部分に歪みが溜まるかが良く分かる.という展示
物です.偏光板は外から回せるようになっていました.



海岸の断面模型.波を起こす部分はなぜか隠されていました.海岸付近
の砂の動きは面白かったのですが造波装置が見えないのは非常に残念でした.



こういった原寸大モデルがたくさんあります.



これもそうですね.子供には恐竜の大きさを実感するのに良いかもしれ
ませんが大人には人気がないようです.



日本でもこういうのは良く見かけますね.



数学コーナーです.数学の公式や幾何学の問題が易しく説明されていま
した.が,歩き疲れていると真面目に読む気になれません.



正規分布を解説する展示です.写りが悪くてすみません.上からボール
を無造作に落とし続けた時に下の筒にどのように溜まるかを見せていま
す.確かに正規分布っぽく溜まっていました.これには感心しました.



竜巻のモデルです.他の科学館でも時々見かけますね.触れるように
なっているので空気の流れを実感できます.家が壊れるとか車が吹き飛
ばされるというような力は感じられませんが渦を巻いている様子が間近
で見られて興味深いです.



自然史博物館だった時の名残でしょうか.この地方の動物のはく製がた
くさん展示されていました.しかしあまり人気がないようです.



シアター付近の様子.写真下方の車は別料金を払えば乗車できます.宇
宙や深海へ旅できるとのことでした.窓の外に見えるのはダックツアー
の水陸両用車.



5階建てビルに匹敵する高さを誇る大画面シアターです.プラネタリウ
ムのドームを斜めに傾けたような室内で,きつい傾斜に座席が並んでい
るので周りの人を気にせず映像に集中できます(高所恐怖症の方には
少々辛いかもしれないほどの傾斜です).音響設備も素晴らしく,映像
も大迫力で,とにかく理屈抜きで満足しました.大空を飛んでいるよう
な光景や水中散歩の映像をこの迫力で楽しめるのは実に素晴らしいで
す.でも船に酔いやすい人は注意が必要かもしれません.このシアター
で現在(2009年5月)行われているショーのタイトルは「アドレナ
リン,危機の科学」「アマゾン」「火星彷徨」「極致の風景」です.面白そうでしょ.



大画面シアターの映像室です.わざと外から見えるようにしてあり,映
像技術も展示の一つとして使う姿勢は素晴らしいと思います.



プラネタリウムです.かなり大きいプロジェクターでしたが星の解説は
まぁ普通でした.レーザーショーと呼ばれるレーザー光を使った催しも
ここで行われました.レーザーショーは大音量の音楽に合わせて弱い
レーザー光でいろんな図形を描いてみせるショーですが非常に退屈でし
た.科学とは全く無縁でしたしショーとしてもつまらなかったです.こ
のプラネタリウムで現在(2009年5月)催されているショーのタイ
トルは「今夜の空」「冥王星に何があった?」「星々の神話」とレー
ザーショーです.



小さい子供の遊び場.



ボストン科学館から見たチャールズ川.左側の球体はプラネタリウムです.



電気に関する展示室です.ここでは定期的に解説員が講演をするようで
す.雷実験が名物だと聞きました.この時は講演の時間を過ぎていまし
たが解説員が周辺のお客さんを集めて何やら説明していました.



お土産屋です.ボストン科学館オリジナルのものはあまりありません.
日本でも売られているような科学玩具が中心です.


ざっと展示物を紹介しましたがいかがだったでしょうか.体験型とは言
えない展示物が多いので展示の意図を理解するには少々頭を使います
し,詳しすぎる説明パネルが好奇心をなえさせる場合もあると思います
が,じっくり時間を掛けて理解しようと頑張れば得るものは多いと思い
ます.逆に言うと積極的に何かを得ようとしないと面白くない科学館だ
と思います.
ここで紹介した展示物はほんの一部です.通常展示物だけでもじっくり
見ようと思うと一日では足りないでしょう.理系のあらゆる分野の展示
物がとにかくたくさんおいてあります.ボストン科学館はこの大量の展
示物とシアターが特徴的ですが,その他に挙げる特徴としては多くのラ
イブショーでしょうか.電気関連の展示室では静電気発生装置を使った
雷実験が定期的に行われていますし,生きた動物との触れ合いやゲーム
大会,化石探しなど時間を区切ってたくさんの催しがいろんな場所で行
われているのでとにかく時間を気にしつつ駆け足で回らないといけませ
ん.そんな多彩なライブショーを更に充実させているのは周辺の大学関
係者による講演会でしょう.ボストン科学館では金曜の夜に無料講演会
や星空観望会を月に数回催しています.その他にも周辺の大学関係者に
よる様々な講演会が不定期に催されていますし,様々な研究者を招いて
毎週のように更新されるウェブラジオ(Podcast)による科学談
義も非常に面白いです.また,電気関連のライブショーに使われている
静電気発生装置(バンデグラフ)はマサチューセッツ工科大学から寄進
されたものとのことですし,ナノテクコーナーでも周辺の大学を退職し
た研究者や技術者が電子顕微鏡を使って様々な展示や解説を行っている
そうです.ボストン科学館はそういった周辺大学からの強力なサポート
に支えられ,常に刺激的な展示物を生み出し続けることで人々を魅了
し,その魅了された人々によって科学館が支えられるというシステムを
構築しているのではないかと思います.
ボストン科学館は科学館の本家を自負しているだけのことはあり科学教
育にも力を入れています.当然ながら教員が自由に使える図書館や
DVD,教材などは完備されていますし,教員は登録するだけで入場料が
無料になり,ショップでの買い物も割引になります.また,2008年
にはボストン科学館内の技術能力センター(National Center for 
Technological Literacy)を基幹として,アメリカ中の教員(幼稚園か
ら高校まで)を対象に科学技術教育法の教育プログラムを立ち上げてい
ます.このプログラムに参加するとノースダコタ州の大学(Valley 
City State University )から学士や修士の学位が取得可能とのことで
す.このプログラムの背景にはアメリカが抱える教育の質の地域差問題
を埋める狙いがあるのかもしれません.更に,ボストン科学館は
2005年からの3年間にアメリカの研究予算を配分する機関
(NSF)から20億円の資金を得て,エクスプロラトリアムなど
と共同でナノテクセンターを作るなど科学自体への貢献にも力を抜いて
いません.とにかく隙のない科学館と言えましょう.

ボストン科学館はエクスプロラトリアムと並ぶ有名科学館ですが,その
立地条件も規模も内容も随分異なるように思えます.皆さんはどういっ
た科学館が理想でしょうか.

作る会 山本順司

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